
懶惰てふ体内の墓地晩夏光
血吐くなど浪士のごとしおばあさん
顔せに髑髏の跡や蕎麦を打つ
枕辺に夢みよと誰が藁捨て置く
天を発つはじめの雪の群必死
からだなき干物の袖火事あかり
カツ揚がる沸騰空母沈むさまに
左よりわが埋葬を救うシャベル
沿線に金色の障子救いを待つ
死後辛うじて全滅をバケツに汲む
黄金の転轍手この駅隣接なし
木を葬る木の葬列に妻がいる (大原テルカズ句集より)
「いま、僕の眼の前には、この十余年間に、彼が秘かに剽めとり、秘かに貯えてきた多くの財宝が、— すなわち、「幼なさ、卑しさ、愚かさ、古さ、きたならしさ、 ひねくれ、濁り、独善、恣意」と彼が呼ぶところのものを蒐めた、句集「黒い星」がある。」 (『黒い星』序にかえて/高柳重信 より)
大原テルカズ(本名:大原照一)
1927年千葉県生まれ。千葉中学3年時に作句をはじめ、大野我羊の雑誌「芝火」に投稿。戦争末期同人となる。戦後は「俳句世紀」、「東虹」に参加。東虹同人となる。高柳重信「俳句評論」に参加。大阪移住の際に「縄」に参加。句集に『黒い星』(芝火社)、『大原テルカズ集』(八幡船社)がある。俳壇とは距離を置いて活動し、後期には「エコー」「俳句現代」「ドン」などの同人誌を刊行。
本句集では、大原テルカズの希少な第一句集『黒い星』(芝火社)をはじめ、合同句集『火曜』、第二句集『大原テルカズ集』をなど入手困難な句集を収録。
さらに補遺として「芝火」、「俳句世紀」、「東虹」、「俳句評論」、「縄」などの各誌に掲載されたテルカズ作品を収録。このほか初期作品として「大原百蔵時代」「大原照一時代」の作品を掲載した。略年譜つき。
B6版ペーパーバック306頁
目次
「漂流感」
『黒い星』
「見られては見る鼠」
『大原テルカズ集』
「以降抄」
「後方抄」
初期作品(大原百蔵・大原照一時代)
補遺
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